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弓の訓練は、比較的好きだった。人と争わなくていい。的に当たれば、褒めてもらえる。
パルタにとって矢とは的に当てるものでしかなかった。それは大変な誤解だった。
襲撃は夜半であった。鐘が打ち鳴らされてパルタが飛び起きた時、町は騒然としていた。
矢は燃えていた。熱く猛りながら降り注いだ。自分に向かってくる矢がこんなに獰猛なものだと、パルタは初めて知った。弓と矢も間違いなく、殺し合いの道具だった。
騎士団は迎撃に出、残る者たちは消火に当たっている。火勢の強い家屋とその両隣りは男たちが打ち壊していた。パルタは母と共に水を運んだ。幸い、自宅に火矢は届いていない。
騎士団が敵をいくらか押し返したらしいと人が言った。それを聞いた母の顔を見て、パルタはこれも全く初めてのことだったが、騎士団を誇りに思った。人を守ることができる。どうやらそれは、大切な力だったみたいだ。
町が幾分か落ち着き始めると、パルタは自分の弓を取った。
「駄目よ、パルタ。大人しく待っていなさい」
母が制した。
「わかってるってば」
そうは言いながら、パルタは戦いたくて仕方なかった。
自分が強いられてきた苦痛には、ちゃんと意味がある。それを発見した興奮を、パルタは抑え切れずにいた。
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