台風が夏を連れ去った

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台風が夏を連れ去って消えた 手を振る時節は過ぎ風が吹いた 髪を押さえて恨む理由を閉込めた 綺麗に整えた首筋は肌寒そうに 足元はぎこちなく定まらない しきりに手を洗っていた朝 靄掛かる頭が不意に軋み 怯んだ口元を両手で隠して 揺らいだ瞳から何かが零れた 吐いた息の温かさにも馴染んで ガラス越しには無音の景色と 無声の会話が反射っている 些細な離愁に揺らぐ君を 重ねた影は徐々に薄れて 頼りなく消えた声に滲む 涙痕に目を逸らしたのは 決して忘れた訳じゃない 約束事を叶えてしまった 詩を読みながら待っていて 最後の雨が上がったら すぐ会いに行くよ
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