第1章

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めくれあがったスカートから覗く脚に触れると、彼女が鋭く息を飲んだ。 そのまま、まだ赤く残る痕まで指でゆっくりと辿る。 思い出せばいい。 これぐらいの意地悪はいいだろうという気持ちだった。 無かったことにすればいいというのは変わらないけど。 でも、あの男の身代わりだったのなら、彼女との一件がこの週末俺にもたらした結果を思えば少々仕返ししてやりたくなった。 「見えてますよ」 真っ赤になって声も出せずにスカートを引っ張っている彼女に気が済んだ俺は、これ以上の悪戯はするまいと立ち上がった。 けれど、そのまま立ち去るはずが、タイミング悪く廊下から賑やかな声が聞こえてきた。 「篠田先輩に食事オッケーもらっちゃったぁ」 「先輩ってフリーなの?」 「たぶん?由香がんばるぅー」 さっきの管理部の子だ。 「あんな約束なんかしていいの? 彼女いるくせに」 話し声が遠くなると、しばらく黙っていた彼女が唸るように言った。
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