第1章

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相当きまり悪いのだろう。 いつもの優雅な歩き方はどこへやら、ロボットのようなぎこちなさで彼女が自販機に向かった。 せかせかと小銭を入れたかと思うと、なぜか人差し指が戸惑ったようにあちこちのボタンをさ迷っている。 その姿を後ろから面白く眺める俺も、相当趣味が悪い。 でも、手入れの行き届いた艶々の爪はあの夜とは違う色。 それの何が気に入らないのか、身勝手なことにまた腹の底がモヤッとする。 しばらく迷った末にようやく何かのボタンを押した彼女が、おつりを取るために軽く屈んだ。 ふわりと漂う彼女の香り。 肩の上で流れる真っ直ぐな黒髪。 屈むと際立つ、細くしなやかな腰のライン。 ……まずい。 苛めるはずが、脳内に甦ったあの夜の記憶で俺が苦しくなってきた。 「二日酔いは大丈夫でしたか?」 心中の劣勢を立て直そうと発した言葉はあの一件に露骨すぎたようで、彼女は取り出した十円玉をすべて床にぶちまけてしまった。
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