第1章

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あの日の朝、彼女が目を覚ます時、俺は居ない方がいいと思った。 彼女がひどくショックを受けるのは目に見えていたし、自分を立て直す時間が要るだろうから。 腕を外すと、彼女は頼りなげにしがみつくような仕草を見せた。 そんな仕草も泣き腫らした寝顔も普段の完全武装した彼女と違っていて可愛らしかった。 けれど彼女が求めた本当の相手は俺ではない。 余計な感傷が湧いてきそうで眺めるのをやめ、そっとエアコンを設定してドアを閉める。 前夜はコンビニに寄る暇すらなく冷蔵庫が空なので、朝食を買いに外に出た。 コンビニでは最悪に徹してやろうと、バゲットのサンドでもカフェオレでもなく、彼女らしくないものを選んだ。 好きでもない男に抱いてと泣きながらせがんだなんて、誇り高い彼女には我慢ならない記憶だろう。 何もかも思いきり嫌悪して、罪悪感なく記憶もろとも抹殺してくれたらいいと思った。
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