1:始まりと、マドレーヌ。

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頭は混乱で真っ白になった。 ついさっき包装したばかりのマドレーヌが 紙袋ごとベンチから落下して 周りに錯乱している。 「やば……!」 私は慌てて立ち上がり、 片っ端から紙袋へ詰め始めた。 すると サッカー部の彼がふと 無言で、自分の足元に転がったマドレーヌを数個拾う。 そして、私の持つ紙袋の中へ、注意深く入れてくれた。 「あっ……りがとうございま……す!」 緊張やら情けなさやらで 上手くお礼すらも言えない。 ずっと見ていた憧れの人に いきなりこんな格好悪いところを見られてしまうなんて 最悪だ。 しかし彼は、私のお礼に軽く微笑むと 次を拾い始める。 「あの、だいじょぶなので……!ごめんなさい!!」 「いいよ、拾うよ」 「……っ」
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