1:始まりと、マドレーヌ。

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すると彼は しばらく忙しない私の動きを呆然と見ていたかと思うと ふいに、笑いだす。 「あはは!そんな慌てないでよ」 「す、すいませ……」 彼が笑うと わずかに、八重歯が見えた。 こんなに近い所から彼の笑顔を見ることができるなんて 夢にも思わなくて、心臓はドキドキと鼓動を速めている。 だけど私はこんな状況の中 彼の笑顔にみとれてしまっていた。 すると。 「てか、それ、俺もらっていい?」 「え!?駄目です!!落としたし!」 私の手に所在無く握られたマドレーヌを 彼が指差す。 「いいよ、袋に入ってるじゃん」 「でも……!」
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