第1章  価値観の相違

2/13
前へ
/35ページ
次へ
そんな私の節制ぶりを母はいつも笑っていた。 ときには「彩子はケチやねぇ、 私にはよくわからんわ」 とも言い放った。 私が子どもたちには高価なものは 誕生日やクリスマスにしか 与えないことを知ると、 「梨子と七海はかわいそうやねぇ、 こんな窮屈な家に生まれて」 とも言ったものだ。 こんなふうに、母は節約してお金を貯める私を よく小ばかにしていた。 母にすれば、 決して悪気はなかったのかもしれないし、 「もう少し贅沢してもいいんじゃない」 って言いたかったのかもしれないが、 私は父と母がお金のことで喧嘩ばかりしている そんな家庭に育ったので、 お金がないという恐さを 嫌と言うほど知っていたのだった。 と同時に、母のその言葉は 「だから私はお前と合わないんだよ、 お前のことが好きじゃないんだよ」 と言っているような気がしてならなかったのである。 親に愛してもらった記憶がない私には どうしてもそうとしか受け止められなかったのである。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加