第一章

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ふ、と瞼を上げれば荒野ではなく見慣れた天井が顔を覗かせる。何度か瞬きを繰り返せば段々と意識が覚醒してくる。 夢か。随分懐かしい夢を見たものだ。今日は学園に編入する日。そんな日にこんな夢を見るだなんて。何かの予兆か?まあ、いいか。 目頭をぐりぐりしながらベッドから降りる。まだ眠いが今寝たら遅刻する。起きるには少し早いけど起きよう。部屋についている簡易洗面所で顔を洗い、朝飯として先日買ったシンプルなパンを頬張る。ジャムでもあればいいがここにはない。ギルド員用の食堂へ行けばいいがわざわざジャムのためだけにそこまで行くのは面倒だ。食事を済ませ歯を磨き、ボックスから着替えを取り出す。 真新しいブレザーの制服に袖を通し、青のネクタイを締める。制服なんて前世で着た以来かもしれない。深い青のローブを羽織れば着替えは終わる。きっちり着こなすわけではなく、ネクタイを緩めたりワイシャツの第一ボタンを開けたりと軽く着崩している。この間マスターから渡された学園のパンフレットによると、学年でイメージカラーが決まっているらしい。一年は青、二年は緑、三年は赤、といった具合に。だからネクタイとローブがそういうカラーリングになっている。 身支度を終わらせ部屋から出る。扉に鍵をかけ鍵をボックスにしまい込む。そして転移部屋へ向かう。転移部屋とは要は転移用出入り口のこと。長いから通称が転移部屋だ。転移部屋に着き、室内の気配を探る。見知った気配が一つ。見送りに来たのだろうが、いささか早いのでは?と思いながら扉を開いた。 「はよ、マスター。」 「お早うエイト。思ったより早いな。」 「早起きしただけ。ルイスはまだ?」 「そうだよ。だがもうすぐ来るだろうな。」 ああ、とマスターの言葉に相槌を打ち部屋の壁に寄り掛かる。目を閉じじっとしていれば部屋に近づく気配。じっとしていなくても感じるけどな。 閉ざされていた扉がガチャリと開かれる。そこから入ってきたのは俺と同じ制服に身を包んだルイスだった。俺と違い堅苦しい程かっちり着込んでいる。初めての学園だから緊張しているのか? 「お早うございます、マスター。」 「ああ、ルイスお早う。二人とも揃ったことだし、早めだけど向かいなさい。」 ルイスと一緒に床に描かれている魔法陣の中心に立つ。ルイスは律儀に行ってきます、と言って転移する。俺も続いて転移した。
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