序章

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被っていたフードを脱ぎ一息つく。そして魔法陣が床に描かれた部屋から出て廊下を歩いた。 「エイト!お前また無関係な人を巻き込んだな!?」 大人になりきれていない少年の怒りの籠った声が俺を呼び止める。振り返れば純白のローブを着た白金の髪に海のような碧眼の、女子受けしそうな甘いマスクの十五歳程の少年がその優しげな目元を吊り上げ俺を睨んでいた。こいつの名はルイス。正真正銘俺の双子の兄だ。 俺はルイスとは対照的な漆黒のローブを着、この国では珍しい黒髪黒目だ。顔はルイスと似ている。 ルイスは俺の意識が自分に向いたとわかると説教をし始めた。恐らく昨日の俺が遂行した依頼の話だろう。情報が回るのが早い。俺が誰かを巻き込んだり殺したりするとルイスはいつもこうやって説教をしだす。俺はその姿を冷めた目で見る。いつものことだが全くと言っていい程心に響かない。 「…別に、お前には関係ないだろ。」 「なっ…エイト、自分がいつも何をやっているのかわかってるのか!?」 冷ややかな声音でルイスの説教を遮れば当然ルイスは噛みついてくる。ぎゃんぎゃん喚く彼を無視し俺の所属するギルドのギルドマスターの執務室に入る。ギルドには魔法を無効化する結界が張られているから直接執務室に転移魔法が使えない。だからギルド内にある転移用出入り口を使う訳だが、そこに待ち伏せされたら回避出来ない。一般の出入り口を使えばいいのかもしれないけど俺が一般の出入り口に行くと大騒ぎになるからあまり使いたくないのが本音だ。 「…エイト、ノック位はしなさいと言っているだろう?」 正面のデスクで書類と睨めっこしていたのはギルドマスターのリアン・ウェーラー。俺達双子の育ての親だ。さらさらの金髪に銀のフレームの眼鏡をかけた藍色の眼の優男。少なくとも三十路は過ぎているはずだがどう見ても二十代前半だ。 「どうせ気配で気付いてんだろ。なら良いじゃねえか。」 「常識的に考えて、だ。で、ルイスは今度は何に怒っているんだ?」 マスターは手に持っていた書類を置き小首を傾げる。ルイスは執務室で騒ぐ訳にはいかないと黙っていたがマスターに尋ねられて声を荒げた。 「マスター!エイトがまた無関係な人を巻き込んで大怪我を負わせたんです!」 「ああ、昨日のやつか…。」 マスターは今思い出したように呟いた。
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