序章

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「…なあ、エイト。」 「あ?」 後ろを歩くルイスに呼び止められる。足を止め振り返ると、ルイスの複雑そうな表情が見えた。 「その…さっきはすまなかった。責め立てたりして…。」 「あっそ。別にどうでもいいし。」 さらりと言えばルイスは目を丸くした。なんだ、意外だとでも思っているのか。 「お前が俺を責めるのはいつものことじゃねえか。今更気にする必要が何処にある。」 ルイスが返事をする前に俺はじゃあな、と言って部屋に入った。 だからルイスが寂しそうにエイト、と俺の名を呼んでいたことなど俺は知らない。 *** ギルドは住む場所がない者に部屋を提供している。俺達双子は幼い頃からギルドの世話になっているから勿論部屋を与えられている。トイレ付の六畳程度の広さの部屋は傷つけなければ何をしてもいいということになっており、住む人の趣味で壁紙を変えるなりなんなりしても大丈夫だ。俺はモノクロのシンプルな家具を愛用している。壁一面に天井まである本棚を設置し魔法や歴史の本を収めている。俺に読書は似合わない?ほっとけ。それからシングルのベッドとデスク、クローゼットがある。 俺達が行く学園、国立ルーセント学園は全寮制らしい。だから俺も例外なく寮に入る。休日はここに依頼をこなしに戻ってくるだろう。こっちでも生活出来るくらいの荷物は残しておこう。 そう決めて無属性中級魔法のボックスを発動させ、着ていたローブを脱ぎボックスの中に仕舞う。 魔法は強さや難易度でいくつかの階級が定められている。下から下級、中級、上級、最上級、神級の六階級で、例外の古代魔法と禁忌魔法がある。ボックスは無属性(属性のない純粋な魔力のこと。魔力がある者なら誰もが持っている属性)の下から二番目の難易度の魔法だ。魔力で空間を歪め異空間を生み出す魔法。魔力量が多ければ多い程作られる空間が広くなる。大抵の人はボックスを収納用に使う。俺も例に漏れず収納用に使っている。 ボックスの中に服や本など寮に持っていく物を放り込んでいく。粗方の物は持てたか、と判断すると、ギルドの共同シャワールームに足を運び一日の汗を流した。魔法で髪を乾かし部屋に戻りベッドに寝転んだ。
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