序章

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突然だがここで俺の生い立ちを話しておこうか。 俺には所謂前世の記憶というものがある。前世の俺は平凡な男だった。両親と弟に恵まれそれなりに幸せな生活を送っていた。漫画やアニメが好きだった。オタクというほどどっぷりハマっていた訳ではないけれど。友達とそういう話をするのは楽しくて好きだった。平凡だったけど幸せだった。 けれどその幸せも長続きしなかった。俺は弟を目の前で亡くした。交通事故だった。もしかしたら助けられたかもしれなかったのに、と弟を亡くしたその日からずっと自分を責め続けた。 そしてある日、ふらふらと街中を歩いていたら通り魔に遭い、俺は殺された。今思えば随分親不孝だと思う。もう親の顔なんて覚えてないけれど。 そして気が付いたら生まれ変わってた。記憶が戻ったのは二歳くらいの時。案外すんなり受け入れられた。驚いたのは俺は闇の貴族の子だったということだ。 この国を作った八人の魔法使いの子孫だ。聖属性の魔法使いの子孫は今の王族、火、水、雷、土、風、光、闇属性の魔法使いの子孫はそれぞれ七大貴族になった。その七大貴族の一つ、闇の貴族の次男坊に俺はなっていた。長男はルイスな。厳格な父に優しい母。貴族として生きるのは面倒だったが前世の傷が癒える程には幸せだった。 その幸せも五歳の時に終わりを告げた。小さい子供の時は体内の魔力が安定しない。やっと安定するのが五歳くらいで、この国では五歳になると魔力量を量るのが一般的だ。七大貴族は大体の者は幼い頃から魔力量が多い。だから周りは俺達にも勿論期待した。特に俺は早熟で頭が良かったから長男のルイス以上の期待が寄せられてた(実際は前世の記憶があるからなんだけど)。 五歳の誕生日に魔力測定をした。結果、俺達二人には魔力障害があることが判明した。魔力障害とは、魔力が全くなかったり属性がなかったりと魔力に何かしらの障害があることだ。ルイスは全く魔力がなく、俺は雀の涙程度にしか魔力がなかった。そして闇の貴族たる所以の闇属性が二人してなかった。その日から父の態度が急変した。俺達をまるで害虫を見るような目で見るようになり、地下牢に閉じ込められるようになった。母さんは変わらず俺達を気にかけてくれたけど、病を患い死んでしまった。 そして五歳の誕生日から半年程経ったある日、俺達は父に捨てられた。
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