たけかきのかほり彩なす秋牡丹

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秋牡丹: 実りの秋を詠むならば、牡丹肉、即ち猪肉。ただしスライスや盛付けの如何を問わず、早咲きの寒牡丹を比喩するものとする。 猪肉もまた積極的害獣駆除の結果、禁猟期の晩秋から早春を除けば茸と同様ほぼ全期入手可能となったが、仏・ベネルクス・独等を始め日本も含めた専らで狩猟一般解禁期は秋期限定なので、特に秋の味覚とした。その味わいは、同種畜産品種の豚の肉に類似するが脂が少なく、またしばしば「臭み」と称される独特な野趣に満ちたものである。 彩りの秋を詠むならば寒牡丹のみを指し、猪肉の比喩は無い。 寒牡丹を始め殆どの牡丹は園芸品種、即ち人為によるもの。種子から開花まで栽培を完遂成功させるのが非常に困難で、野生原種・園芸品種共に長らく希少、故に高貴の象徴とも見做されてきたが二次大戦後、栽培の比較的容易な芍薬を親木に用いた接ぎ木による栽培が牡丹の開花も容易にし、現在の流通へとつながった。開花時期は秋冬期咲きの品種で10月下旬晩秋から1月仲冬まで、同じく花の盛りは冬至を挟んで1~2ヶ月ほど。 牡丹は、日本では散った後の無残から桜ほど愛されていないものの、中国ではその咲き様の絢爛から国花相当と見做す者もあるほど愛され親しまれており品種も多彩だ。また絢爛華麗故だろう、「牡丹」の綴を「富貴花」ともすることから、この句で「秋富貴花」と綴るのも一興か。
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