たけかきのかほり彩なす秋牡丹

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この句は、掛詞により二通りの句を成す。即ち、 茸、柿の 香り彩なす 秋牡丹 竹垣の香 彩なす秋牡丹 (非定形) 前者ならば、 季題は「茸」・「柿」・「秋牡丹」、 季節は「実りの秋」転じて「食欲の秋」、 主題は「猪肉のソテー茸と柿のソース和え、またその賞味」となり、 後者ならば、 季題は「秋牡丹」のみ、 季節は「彩りの秋」転じて「芸術の秋」、 主題は「晩秋から来たる冬を想起させる早咲きの寒牡丹、またその咲き様」となる。 茸: 昨今、栽培技術の飛躍的発展を受け年中味わえるようになったが、茸の旬は本来秋。品種は特定せず、シイタケ・シメジ・マイタケ・エノキ等の一般的庶民的なものを想起して、味わい鑑賞すべし。 柿: 謂わずと知れた、秋の味覚の筆頭格。 この句では樹木自体や樹に実る実でなく、食品・食材を指す。 竹垣: 竹で編んだ垣根。自生する生物としての竹ではなく、伐採後の建材としての竹で編む。転じて人為の象徴。ここでは、青竹・晒し竹等の如何や編み込み等の形式は不問とする。 また、大規模な庭園よりもむしろ、しめやか密やかに建つ民家の庭先を想起した方がより趣深かろう。 の: 属格の連体格助詞。主格の解釈も可能だが、些か強引不自然か。 かほり: 香り。即ち、嗅覚に訴えられる刺激。 ただし特に彩りの秋を詠む場合、雰囲気として直観される「にほひ(匂ひ・臭ひ)」も同時に含意。 彩: あや、即ち彩り。即ち、視覚を通して感知される、ものごとの鮮やかな美。 なす: 成す。彩りは、既に予め「在った」のではなく、香り(実りの秋)または牡丹自ら(彩りの秋)が「成した」もの。
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