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「すみません。お父さんたちがいない間に、理さんに渡したいものがあるんです」
「ん?」
かのこちゃんは押入れの中からオレンジの包みを出した。
俺はわけも分からず渡された包みを受け取った。
その場で開けると、中にはカボチャ型したカボチャ色クッキーがいくつも入っていた。
「理さんはこんなの食べないかもしれないけど……あの、好きじゃなかったら捨てちゃってください、私全然そんなの気にしないんで」
「捨てるわけねえだろ」
俺はクッキーを半分かじった。
素材の自然な甘みを生かした味は俺好みだった。
「……美味いな」
「よ、よかったぁ」
かのこちゃんはほっとして笑顔をこぼした。
「深夜、みんなに気付かれないように暗い中で作ってたので、変な味だったらどうしようかと思ってたんですけど」
「何、自分で食ってないの?」
「……元々そんなにいっぱい材料使えなかったし、数が減っちゃったら嫌だから」
「1枚どうぞ」
「いや、いいです」
「俺がもらったんだから、俺がこのクッキーをどうするか決める権利がある。食べろよ、かのこちゃん甘いの好きだもんな」
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