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「え、や…あの……っ」
狼狽える私をよそに、雅紀さんは上機嫌で。
それでも振りほどけない強さで私の手を握っていた。
少し歩くと、目の前に猿沢池が見えてきて。
雅紀さんは躊躇もなく池の畔へと足を進めた。
池の水を見ると、私の体はぞくりと強ばって。
「どうしたん?」
それが手を通して雅紀さんにも伝わってしまったようだった。
「…怖いんです」
こんなこと、誰にも言ったことがなかったのに。
私の口からするりと言葉が零れ落ちた。
「この池見てると、吸い込まれそうになる」
雅紀さんはじっと私の顔を見て。
それから猿沢池を振り返った。
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