vampire route

15/15
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「それよりお嬢様、少し顔が赤いようですが、熱でもあるのでは」 ホールから漏れる灯りだけの暗がりの中、京介が心配そうにまゆらに顔を寄せた。 再び近付いた彼の顔に、まゆらはの脳裏にはさっきのやり取りがリプレイされる。 「だっ、大丈夫だから!」 彼女達慌てて大きく一歩引き下がった。 京介は困惑した表情を微かに覗かせつつも、 「分かりました。でも兎に角中へ」 そう言うと、身に付けていたマントを外し、彼女の肩に掛けた。 マント越しに触れられた手に、まゆらは安心感を覚える。 さっきまでとは違い、今の彼の体温は、執事として彼女を気遣う優しさを一緒に伝えていた。 それだけでなく、口調や表情、そして彼女が気にしていた瞳の色も、彼女のよく知る本来の彼に全て戻っていた。 「……ハロウィンって、ちょっと怖くて不思議な魔法が掛かってるのかも」 京介に連れられながら少し疲れたようにそう呟いたまゆらに、彼は穏やかな笑みを返すのだった。 Fin.
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!