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「それよりお嬢様、少し顔が赤いようですが、熱でもあるのでは」
ホールから漏れる灯りだけの暗がりの中、京介が心配そうにまゆらに顔を寄せた。
再び近付いた彼の顔に、まゆらはの脳裏にはさっきのやり取りがリプレイされる。
「だっ、大丈夫だから!」
彼女達慌てて大きく一歩引き下がった。
京介は困惑した表情を微かに覗かせつつも、
「分かりました。でも兎に角中へ」
そう言うと、身に付けていたマントを外し、彼女の肩に掛けた。
マント越しに触れられた手に、まゆらは安心感を覚える。
さっきまでとは違い、今の彼の体温は、執事として彼女を気遣う優しさを一緒に伝えていた。
それだけでなく、口調や表情、そして彼女が気にしていた瞳の色も、彼女のよく知る本来の彼に全て戻っていた。
「……ハロウィンって、ちょっと怖くて不思議な魔法が掛かってるのかも」
京介に連れられながら少し疲れたようにそう呟いたまゆらに、彼は穏やかな笑みを返すのだった。
Fin.
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