vampire route

｢お気持ちだけで。私、車ですので｣

と京介はそれを丁重に断ったが、しかし彼は微笑んで

｢ご安心下さい。こちらパーティーオリジナルのソフトドリンクですので｣

と言って是非にと勧めた。

京介は少し躊躇ったものの、

｢……ありがとうございます。では頂戴致します｣

と、一先ずそのドリンクを受け取る事にした。

すると男はふわりと笑う。

｢では、パーティーをごゆっくりお楽しみ下さい｣

そして丁寧に会釈をして京介から離れていく。

京介は静かに彼を見送り、そしてその姿の見えなくなった所で、オレンジの液体に鼻先を近付けグラスを揺らした。

確かにそれからはアルコールの香りはしない。

それなら支障はないだろうと、彼は一口……そのドリンクを口に含み喉に流した。

少し離れた場所で、青い髪の男がその光景を盗み見ながら妖しく目を細め、片方の口角を引き上げる。

グラスを唇から離し、京介が再び、ゆっくりとまゆらに目を向けた。

しかしその目は、何時もの彼のものではなくなっていた……────。