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アンティークの洋館に似合うワルツのメロディが流れ出すと、ほろ酔い気分の客たちはペアを組んで、思い思いのダンスを踊り始めた。
そんな中、まゆらも道化師の衣装を纏った男性に誘われた。
一瞬考える表情をしたが、無下にも出来ないと思ったのか、彼女はその誘いを受けた。
京介の見つめる前で、まゆらが踊る。
……が、しばらくして見るに耐え兼ねた京介が壁から背を離し、マントを翻して彼女の元へと向かった。
「なっていませんね、何もかも」
そして二人の側に寄ると、相手の男を静に睨み、見下したような冷たい口調で言い放った。
否応なしに、踊っていた二人の動きが止まる。
言われた道化師の男もさることながら、まゆらも何時もと違う京介の口調に驚きを隠せずにいた。
「何だよ、アンタ。こっちは楽しんでるんだから曲の途中で割り込んで来ないで?」
邪魔をされて不機嫌になった男が京介を睨み返し告げた。
「偉そうに」
と、京介はほくそ笑む。
「そんなダンスでは、曲に対しても、女性に対しても失礼極まりないと言っているんです」
「なっ……!」
怯む事を知らず、更に威圧感を増す京介の態度に男の怒りも増していく。
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