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「え……!? 私、何故こんな格好を」
口調の戻った京介が、着崩した自分の姿に慌てた。
そしてベッドを降り、急いで身なりを整える。
「あ。京ゃん具合悪かったみたいだから……」
自己嫌悪に陥っている彼を少しでもフォローしてあげようとまゆらが告げる。
「お嬢様の前で見苦しい姿を晒してしまい、大変申し訳ございません。パーティが始まってしばらくした後の記憶がはっきりせず……しかし、もう大丈夫です。会場に戻りましょう。理名様たちもお探しかもしれません」
先程までとは違い、今の彼は一流の執事としての風格と聡明さを取り戻していた。
口調や表情、そして彼女が気にしていた瞳の色も、もう全て彼女のよく知る本来の彼の姿だ。
安心した。
しかし、彼女が密かに別の感情も抱いた事は、ここだけの秘密にしなくてはいけない。
「……ハロウィンって、ちょっと怖くて不思議な魔法が掛かってるのかも」
扉を開ける京介の後ろ姿。
そこに、黒い尻尾はない。
敢えて彼女は深く追求する事をせず、そう呟いた。
Fin.
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