第三章 『祇園に響く鐘の音は』

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「葵さん、南門から出ましょう」 と比較的人の少ない南門から境内の外に出た。 よく見かける朱色の楼門は『西楼門』らしい。 「この南門って清水寺に向かう時に使われてますよね」 華やかな西門と比べて、南門はシンプルな石造りの鳥居を仰ぎながらポツリと漏らした私に、ホームズさんは小さく頷いた。 「……葵さん、うちのマンションがこの近くなんですが、もし良かったら休んでいかれませんか?」 と、しっかりと視線を合わせて来たホームズさんに、 ドキン、と鼓動が跳ねた。 強い鼓動の中、除夜の鐘は、今も鳴り響いていた。
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