第三章 『祇園に響く鐘の音は』

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やがて、ホームズさんはコーヒーを淹れてくれて、二人ソファーに並んで座って飲んだ。 「苦くないですか?」 「覚悟してたので、大丈夫です。思ったよりもまろやかで。 ホームズさんは最初から、ブラックコーヒーを美味しいと思って飲んでたんですか?」 「いえ、思えば最初は、大人ぶったやせ我慢からでしたね。 ビールやブランデーもそうです。 そうしていく内に、美味しさを感じるようになる。 大人になるって、そういうことの繰り返しかもしれませんね」 「あ、確かに。わさびやキムチとかもそうですよね」 クスクス笑って頷いた。 本当に、大人になるって、そういうことの繰り返しかもしれない。 そうして、酸いも甘いも知っていくんだろう。 でも、急ぐ必要はないと、 ジックリでいいとホームズさんは言ってくれたんだ。 それはきっと、すごくありがたいことなんだと思う。
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