種の在りか

17/24
576人が本棚に入れています
本棚に追加
/227ページ
ふ、不覚……。 ヤツの靴、玄関にあったのか……。 「ケーキあんよー」 のほほんと手を振ってる。 だ・か・ら。 人んちで何してるんだって話よ。 「何でいるのよっ 仕事はっ?」 「今日は交代頼まれて早帰りなんよ。 ねー、さーちゃん」 「ねー、ぽんちゃん」 ……まさか。 栄の胸ぐらを掴んで引き寄せる。 「ちょっとアンタが呼んだの?」 小声で栄に耳打ちをするが、まともに答える気などさらさらないらしく。 「知らなーい。あたし呼んでないもーん。勝手にきたんだもーん」 と、目の前のケーキをパクつくのに一生懸命。 ウキーッと目を吊り上げたあたしの肩が後方に引っ張られた。 「さーちゃんを怒らない。 俺が勝手に来ただけ。お気になさらず。 それよりなーちゃんもケーキ食べよ、おいしいよ」 と、見せつけられた箱の中身。 うぐぐぐぐっ。 美味そう……。 やっぱりあたしはぽんちゃんにペースを乱される。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!