種の在りか

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栄にはあらためて夜に交渉することとして。 とりあえず目の前の甘い匂いを放つケーキをタダで置いておく手はない。 とっととやっつけようではないか。 覗けば綺麗な弧を描いたピンクの生クリームがあたしを誘う。 おいでおいでをしている。 食べる前からほっぺが落ちそう。 「なーちゃんの好きなイチゴのケーキもあったでしょ」 優しい目が、すぐ近くにあった。 本当に近くて飛び退く。 「こっち……見ないでっ」 「はいはい」 ぞんざいに扱われても。 ぽんちゃんはニコニコと遠目であたしがどれを選ぶか眺めている。 何を選ぶか見透かされているようで癪に障るが、やっぱりイチゴケーキは外せない。 おずおずと箱から出したイチゴケーキをぽんちゃんは満足そうに見ていた。 一口すくって口に運べば夢のような美味しさ。 んん───っまい!!! あまりの美味しさに満面の笑みが出た。
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