第2章

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「……つまり、このバイトを志願したのは単なる興味本位ってわけか。なにが小林教授のゼミだ」 「いや、それはほんと。信じてよ。考古関係のバイト探してたんだよ、ずっと。一年の夏休みには地方の発掘現場でバイトもしてたし」 「え? どこ?」  この辺りの遺跡発掘現場は大体把握している。しかし地方となると別だ。いつの時代の遺跡で、どんな仕事をしたのか興味が湧く。 「食事しながら詳しい話ってどう? ここじゃゆっくり話なんかできないだろ?」 「……くそっ!」  麻生の目の輝きで断らないと踏んだのだろう。加地がしてやったりと顔をにやつかせる。 「お前らが俺の手を止めてくれたから、作業が遅れてるんだ。残業になるからそのあとな!」 「いくらでも待つよ。それだけの価値、弥彦さんにはあるから」  加地が余裕の笑みを見せた。いったい自分の価値とはなんなのか。それを加地に問うのはきっと苦痛を伴うのだろうと溜息のひとつも漏れた。
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