序章

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 雨が降っていた。 美術室の窓際で、それを見つめる少女───美少女、と評してもいい。  涼しげな目もとをした、面長の上品な顔立ち。 腰近くまで伸びたストレートの黒髪を、セーラー服の背にそのまま下ろしている。  身長は、平均的な女子高校生よりも、やや高め。 その体躯(たいく)は、以前、斎藤(さいとう)蒼(あお)から 「着やせするね」 と、言われたように、見た目は華奢(きゃしゃ)な印象を相手に与える。 けれど、その下には、ふくよかな肢体が隠されていた。 (傘…忘れていたわ)
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