0人が本棚に入れています
本棚に追加
本当にそれだけだろうか、と思いながらも、それ以上突っ込んだことを訊くのは止めた。以前、それで彼女に嫌われると言う失態を犯した僕としては、同じことをして折角深められた絆を失いたくはない。
……本人に訊いたら、「え? 絆なんか深めてないですよ?」と真顔で言われそうだけど。
「……神鳥君は、双子だったんですよね?」
不意に、柔乃さんの方から突っ込んできた。兄弟の流れから気になったのだろうか?
「え? ああ、まぁ、そうですね。生まれたのは僕だけでしたけど、本当なら僕には双子の兄がいる予定でした」
今までそのことは僕の胸に引っ掛かっていたが、柔乃さんと出会ってからは、そんなモヤモヤも和らいできていた。
柔乃さんだけに、とか言ったら、呆れられるかもしれないが、感謝しているのは本当だった。
もしあのまま胸の引っ掛かりを抱えていたら、僕は比喩なしで、自分の存在価値を疑っていただろう。
きっと、柔乃さんには大袈裟だと呆れられてしまうだろうが、当人の僕にとっては、それくらい有難いことだった。
だから、僕としては恩返しも兼ねて、柔乃さんの相談には極力応じようと考えている。
最初のコメントを投稿しよう!