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何でこの上手な説明がコミュニケーションで活かされないのだろうと、半ば不憫に思えてきた。
僕が苦手な教科は特に化学である。質量保存の法則など、専門的な用語は大きな津波のように僕の脳を覆い、凄まじい震動に襲われるような感覚に陥る。
「そこまで酷い被害に遭うのなら、病院に行かれることを勧めますよ」
素っ気ないことを言いながらも、流石、柔乃さんと言うべきなのかーーとても説明が分かりやすい。
大津波のような拒否反応が、柔乃さんと言う防波堤で簡単に防がれる。
「……て言うか、柔乃さん。陰陽師なのに、化学が得意なんですか?」
何か不思議な気分だ。
「酷い偏見ですよ、それ。一応、理数系なので。神鳥君は文系なんですね」
「はい。現代国語と古典、社会、歴史はどれも大丈夫なんですが、反対に数学と化学が苦手で……英語はまあまあですかね」
苦笑しながら、教えられた公式を使って問題を一つ一つ解いていく。今まで何のことか分からなかった問題文が次第に頭の中で形を帯びていった。
「へぇ、典型的な文系ですか……妹と同じです」
また出たか、妹さん。
集中してた脳の何割かが、そっちに逸れた。
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