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「人の心とか良く分からなかったから、私はあまり得意じゃなかったんですけど、妹は簡単に登場人物の心情とか、捉えていましたよ」
言いながら、柔乃さんは計算式を書いていくーー器用だなぁ。
「人の心とか、ああいう問題と違って、現実には答えが無いじゃないですか、だから、私ーー文系とかあまり得意じゃないんです。全く、分かりませんね、人間の心なんて」
本当だろうか?
心の中でそう思ったが、実際に口にはしなかった。
だが、本当に人の心が分からないのだったら、とうして僕に恩を感じさせることが出来たと言うのだろう。
柔乃さんの家庭教師のお陰で、中間テストの成績は上々と言う結果だった。あれだけ分かりやすい教えを受けておきながら、決して良い点数を取れなかったのは申し訳無いが、まあ、それでも前回よりは総合点を上げることが出来た。
お礼をこれだけで済ませる訳では無いけれど、僕は知り合いの老舗和菓子屋で買ってきた大福を持って、柔乃さんの部屋を訪ねた。
「うわあー! ありがとうございます! 私、甘いもの大好きなんですよ!」
子供のようにはしゃぎながら、リスのように大福を頬張る柔乃さん。
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