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だが、それ以外の感覚が無いと言ったら、どうだろう?
可愛い犬を飼ったとして、抱き締めたくても、力加減のことばかりに集中して、愛でることが出来ない。
彼ほど人を愛する者が、強過ぎる力のせいで、愛する者を抱き締めることすら出来ない。
ヤマアラシのジレンマと言う言葉がはっきりと輪郭を帯びて頭の中から浮かんでくるようだった。
生意気にも、そんな報われない斑晶さんを見て、僕は同情してしまった。
「代わりになるものを……? ちょっと待ってくださいよ、柔乃さん。何をするつもりなんですか?」
不安な気持ちを抑えて、冷静に努める。僕との会話にもすっかり慣れたらしい柔乃さんーーどうやら、今の彼女は完全に素のようだ。
本来の柔乃笑顔は随分アクティブな性格を持っているらしい。極度の人見知りだけが彼女ではないと言うことか。
「言った通りです。私達で、斑晶さんが石だけしか食べられない訳じゃないと、証明しましょう」
柔らかい表情とは裏腹に、言っていることはかなり危ない。
「……あの、陰陽師の柔乃さんなら、どうしてゴーレムが鉱物以外を食べられないか……いや、陰陽師じゃなくたって」
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