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と言った。
「……あっ!」
そうだった。庭師なら、まあ、絶対じゃないだろうが、水には触れる。湿った地面に手を付けるだろうし、ホースで水を撒くだろう。
「確かに、大学生として人間に混ざるのは難しいでしょう。ですが、その次に選ぶのが庭師ですか? 調べれば、水とは無縁の仕事なんてあったでしょう。怪力を活かす仕事もあったでしょう」
何か庭師に思い入れがあるんでしょうか? 首を傾げる柔乃さんだったが、それは僕にも分からない。
どうして彼は庭師を選んだんだ?
「えっと、私が言いたいのは、恐らく、斑晶さん自身も誤解されていることがあるのではないかと」
「自分自身のことが分かってないってことですか?」
記憶喪失とはまた違う。感覚が無くて、その上、自分のことが分かってないときたか……。
更に僕達にまで優しく接してくれるのだから、全くあの人は……。
「僕、全力で協力します!」
思えば、こんなにも人のために何かをしたいと思ったのはいつ以来だろう。
何だか悪くはない気分だった。
「まず、私から見た彼の構造を説明しますね」
柔乃さんが取り出したのは黒板だった。
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