今更になるけれど……

4/8
前へ
/38ページ
次へ
 「今度何か作りに伺いますよ」  「……え? あの……?」  当惑する僕を放って、何を作ろうかと頭の中でレシピを考える柔乃さん。  僕と彼女で、生活感の差がハッキリと見えたような気がした。  料理をしていると言うだけで、こんなにも人は活き活きとするのかと、改めて思い知らされる。  「じゃあ……お願いします……」  こうして、幸運にも、僕は好きな人に料理を作りに来てもらうと言う、ありがたい約束を取り付けたのだった。  ハンショウ コウ  斑晶 鉱。  主に自室ではなく、大きな庭の隅にひっそり建てられた納屋に暮らしている。      リョウゴウ  身長は、嶺郷さんとほとんど変わらないくらいだ。この2人が『看嫣荘』の平均身長を高くしているといっても過言ではない。  常識人と言ったのも、彼らの中で比較的と言うだけの話で、納屋で生活している時点で彼も十分変人だ。  「こんな古い……いや、古風な納屋で暮らしているんですか?」  「まぁ、そう思いますよね……」  失言とばかりに口を押さえる柔乃さんを見て、思わず苦笑いしてしまう。  彼女の第一印象はごもっともだ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加