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陰陽師と言う、特殊な肩書きが無ければ、彼女は至って普通の美女なのだ。
だから、この時柔乃さんが取った行動とはーー
「…………うーん」
漫画のような失神だった。
「や、柔乃さん、柔乃さん!!」
助手として以前に、一般的な反応として、僕は慌てて倒れる柔乃さんを抱き止めた。
……駄目だ。すっかり気を失ってしまっている。
やはり、彼女も普通の人間らしいリアクションを取れるのかと、ズレたことを考えながらーー僕は一方で斑晶鉱さんに近付く。
「……何してるんですか?」
疲労がそのまま表されたかのような声だった。
すると、僕の声に反応して、仰向けで倒れている巨体がじたばたともがき出した。
「ああ、そうか。声が出せないんだった」
何せ、こうして実際に頭部が全壊している状況は初めてだから、色々と混乱してしまった。
実に不思議で、奇妙な光景である。
頭を失った大柄の男がゆっくりと立ち上がり出したのだから。
視界が無いのと、頭が無い分バランスが取れないことが災いして、すぐに斑晶さんの体が倒れる。
ガシャーン!
嫌な音がした。
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