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夕日に染まった図書室。 目の前ではあいつが勉強をしている。その姿はオレンジ色に照らされ、ノートに向けられる目はどこか憂いを帯びていた。 後ろにある窓から野球部の声が微かに聞こえてくるぐらいで、此処には完全に俺とあいつだけだった。 他に利用者も居らず、図書委員も居ない。完全に俺とあいつの世界。 だからだろうか。俺はふとあいつに問いかけた。 するとあいつはシャーペンを動かす手を止め、じっと此方を見上げる。その目は観察するかのような目で、何故だか心臓がヒヤリと冷えた。そんな様子を見てか、あいつはクスリと口許に弧を描くと、この世界に似つかわしい音を吐き出した。 「積み木を崩すのって、簡単だよな」 「…………は?」 吐き出された言葉があまりにも脈略のないものだったから、少々面を喰らってしまった。いや、正確にはあったのだろう。おそらくは俺の問い掛けに答えたもの。だから問い掛けが脈略であり、無かった訳ではない。ただ、あまりにも予想を遥かに越えたものだったから、こちらが受け止めきれなかっただけだ。あいつとしては、脈略があることを言ったんだろう。 「だから、積み木を壊すのって簡単だよな?って」 「そうだな」 脳内で積み木を組み立て、それをバラバラと指で崩す所を思い浮かべる。天辺の三角を崩せば、それに呼応するように下が崩れていった。崩れていった積み木がまた下を崩し、最終的には雪崩のように崩れていく。組み上げるときとは比べ物にならないくらい、ものの数秒で、それは崩れ去った。
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