第1章 産まれる産まれる

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それは、まさに足だった。 赤ん坊の頭の代わりに、つるんとしたまるい膝から、出てくる。 ずるり、と、意思があるかのように抜け出してきた。 その出方は、みのりに、芋虫を連想させた。 足が全て出る。 へその緒は、自然にぶつぶつと千切れ、落ちる。わずかに胎内からとび出ていた部分は、うねうねと胎内に戻ってしまった。 足は、それ単体で、生きているように、もぞもぞ動いていた。 分娩室の誰もが、異様な事態に言葉を発せない。 みのりはその足を看護婦に洗わせた。 美しい形をした足だった。 爪先の爪の形に至るまで、美しい。 みのりは、その、患者本人の足を見る。同様に美しい足をしていた。 そっくりと言ってもよい。 「フム…」 みのりは、足を保管するように指示をして、母体のチェックをする。 精神的なショック以外は、問題ない。 ようやくみのりの口元が少し緩んだ。 「原因の特定は後回し、へその緒の千切れた部分は回収、検査する。 何より母体は安静に養生させなさい。」 各員はてきぱきと動いた。
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