矛盾だらけの魔法誕生秘話

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魔法使い。平成を掲げる現代社会に置いて、その単語はあまりにも非力な言葉だった。 科学が発展し、全ての事象は大凡説明出来るこの時代に、魔法などという根拠の欠片もないその単語を、誰が信じるだろうか。 だが、魔法は存在し、現実に使うことができると確信する者が居た。 村上晋也。今年十二歳になる、ピチピチの小学六年生である。 彼が魔法がこの世にあると確信しているのには、きちんとした理由があった。彼は魔法が使えたのである。 話は数日前に遡る。 最初の『異変』に気が付いたのは、学校の教室での出来事だった。 親友でありライバルでもある『つぶらやモンキー』は、好きな女の子に告白しようと、今まさにその子の机に向かっている最中だった。それは、晋也も好きな女の子で、親友に女の子を取られたくない晋也はどうにかしてモンキーの邪魔をしようと計画を企てていた。 しかし、いざモンキーがその女の子の前に立つと、何も言い出す事が出来ずにあたふたしてしまい、しまいには女の子の机の角に股関をぶつけてしまい、その場で悶えてしまうという醜態を晒してしまったのだ。 その一部始終を見てしまった晋也は、あまりの醜態っぷりに目も当てられず、モンキーをつい応援してしまったのだ。 頑張れモンキー。その醜態を笑いに変えて、その場を乗り切るんだ! しかし、人一倍誇り高いモンキーがそんな事できる筈がない。 それも、晋也は知っていた。 案の定、モンキーは股関を打ち付けながらも、強がりながら立ち上がり、女の子はそんな光景を見て若干引き気味になっていた。 「だっ…大丈夫?」 一応、小さく声を掛ける女の子。モンキーは、その声に反応して、股関を押さえながら、女の子に向かい親指を立てて精一杯格好付けてみせた。 それは、端から見ればウケを狙ってやっているようにしか見えない、あまりにも惨めな光景。 だけど、クラスメート達は知っている。モンキーは、ウケを狙ってそんな事をやる人間ではない。 本人からすれば大真面目なのだ。だからこそ、尚更可笑しく見えてしまう。 オマケに、モンキーは坊主頭につぶらな瞳と見た目もイケメンとは良い難い風貌だった。更に、無駄に鍛えているお陰で、筋肉が剥き出しとなり、気持ち悪さも際立っていた。 そんなモンキーに、女の子が振り向いてくれる訳もない。 晋也は、モンキーを応援する一方で、この恋は実らないと確信した。
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