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そんな事を考えながら、晋也は何気なく人差し指をモンキーに向けていた。
別に意識した訳でもなく、ただ何となく人差し指をモンキーの方に向けていたのだ。
するとどうだろう。
人差し指をモンキーに向けた瞬間から、女の子の態度が一変する。
先程まで、モンキーの醜態に引いていた女の子が、ハンカチを取り出し、モンキーの身体を労(いたわ)り始めたのだ。
明らかに最初の「大丈夫?」とは違う、二回目に発せられた「大丈夫?」という言葉は、モンキーをこの上なく心配した「大丈夫?」という言葉だった。
不思議に思ったのは晋也だけではない。周囲の女の子達も、その行動に驚かされ、思わず女の子に声を掛けた。
「ちょっと…。あんたこそどうしたの?」
「どうしたもこうしたも、モンキーくん股関を机の角にぶつけちゃったんだよ!みんなは心配に思わないの!?」
…いや。心配に思うとかその前の問題だと思うけどー…。
女の子の周囲を取り囲むクラスメート達は、その光景を目の当たりにしながら、頭の中にそんなことを脳裏に浮かべたに違いない。
晋也だけは、その時『別のこと』に疑念を抱いていた。
その帰り道。二つ目の『異変』が晋也に訪れる。
晋也は、親友の一人である『謎野少年』と下校していた。
謎野少年とは、列記とした名前であり、謎野が苗字で少年が名前である。
謎野は、ともかく『二次元』と呼ばれる分野が大好きで、アニメ・マンガ・ゲームには目がなかった。しかも、その分野の事を語り始めると話が止まらなくなるという、所謂『面倒臭いタイプの友達』で、登下校の雑談の際は、なるべく『そっち』の話はしないように、細心の注意を払う必要があった。
だが、その日は晋也の誤算により、最悪の事態となった。
「ぬぉッッ!!あれは…!!」
謎野の視線の先には、カードダスと呼ばれるカード専用の自動販売器があった。そして、その自販器には流行りのアニメのイラストが描かれていた。
(嘘だろ…。よりによって何で今日ー…)
ショックを受ける晋也に、謎野はハシャいでいた。
晋也は、謎野がこのような事態に陥らないように、普段から帰り道のルートには気を付けていた。
スーパーマーケット。駄菓子屋。玩具屋なんてもってのほかだ。
ともかく、アニメ・マンガ・ゲームと関連付くものが視界に入るお店は、絶対に通らないように心掛けていた。
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