Monologue Acoustique Ⅱ

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手に取った文芸誌をめくって 活字の表面を目でなぞってやめた 外では低周波の夜が更けてるらしい 温かいレモネードでも買おう 肉まんを手に取る人がいる うっとうしい湯気が立ち込めて くすんだ藍色のコートが財布を探る それから煙草の銘柄を呼んでいた バックライトが光る 風がそこを横切っているのだろう 煙る夜に彼が消えていって バックライトも合わせて消えた 誰かが忘れていった傘は 僕のと同じ 柄が黒いビニールだ 更けて煮詰まった頃に降る雨は 控えめに流れてた有線に絡んでいく 店員の欠伸に次の空気を感じたから 僕はすぐに店を出ようと思った この隙間の季節に見る 夜の雨粒には色が付いている 白を嫌がる、そういう類いの色だ
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