第三章 憧憬

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告白すると思うけど今の状態では告ろうとは思わない。そうだなぁ・・・」  拓海がなにか考えるような顔をした。  「おいらの今の麻衣への気持ちはさ・・・手の届かないお嬢様への憧れみたいなモンなんだよ」  「拓海・・・」  確かに麻衣はめったにいないほどのお嬢様には違いなかった。父親は代議士で兄はその後継者として秘書をしている。もっとお嬢様が集うようなミッション系の女学校に行くのがふさわしい育ちではある。しかし、それは違うと翔央は思った。  「そういうことは・・・」  ない、と言おうとした翔央を拓海は遮る。  「そういうこと、あるんだよ」  何か言いたそうな、けれども言わない、と言う顔をして拓海は笑った。  「告白して、今のこのお前を間にしてではあるけど軽口を叩き合う間柄が壊れるくらいなら今のままでいい」  確かに告白して断られたら気まずい間柄になってしまうのは間違いない。拓海の言う事ももっともだった。  (麻衣がいつか拓海の気持ちに気づいてくれればいいな)  翔央は心の底からそう思った。そして、その心の底から拓海にエールを贈る。  「渋谷で茶する?」  拓海を誘った。  「おー、いいねぇ。ってか・・・腹減った」  「よし、じゃあ・・・アボガドバーガーだな」  最近、翔央と拓海のお気に入りのハンバーガー店に行き先は決定した。
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