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第一章 偶然の出逢い
(かったるい・・・)
昨日、中間考査が終わり前学期の成績にいささかの不安があったのでちょっと頑張った結果、答案用紙の解答欄には満足いったものの寝不足の頭はハイティーンの若者のティンションを朝から下げるには十分だった。
さらに試験勉強の寝不足のせいで今日は寝坊してしまいこのままでも一時間目には間に合わない。
学校の最寄駅から校門まではどんなにのんびり歩いても10分もかからない。寄り道するにも高校生の登校時間に開いている店など喫茶店かコンビニくらいしかない。
(さぼったれ・・・)
と、一瞬頭をよぎった提案を彼の意識が受け入れるのにさほどの時間は必要としなかった。
まっすぐに歩けば校門にたどり着く道を彼は右に曲がった。
国道沿いの駅前の商店街を一歩入ると少しばかりのオフィス、それと新旧入り混じったマンション、ここは都内でも有数の人気を誇る住宅街だった。
彼の目当ては駅前の道を一本入った先の少し閑静な場所にある。都会の真ん中にそれは奇妙な佇まいを見せていた。
小学校から大学までほぼエスカレーター式に上がれる彼の学校の近くではあったがおそらくは彼以外の誰もその存在は知らないだろう。
しかし、彼は今日と同じように授業をさぼってあてもなくウロウロしていた時にそれを見つけて以来お気に入りの場所だった。
(今の季節ならきっと・・・)
それは一年中でそれが一番誇らしい季節に違いない。
それはそこでいつもひっそりと存在していた。
おそらくは誰も手入れなどしていないだろうに少なくとも彼が知っているここ5年あまりなんの変わりもなく存在している。
そして・・・それを気に留めているものを、彼は鳥以外に見たことがない。だからこそ、そこは彼にとってお気に入りの場所に他ならなかった。
しかし、その日は違っていた。
なぜか先客がいた。
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