第二章 現実

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 担任のいささかヒスティリックな怒鳴り声に肩をすくめて麻衣と拓海は自分たちの席に戻った。  (この席じゃ寝ることもできないじゃん・・・)  翔央はちょっと憂鬱そうにため息をついた。暗そうな話だし、もともと演劇好きな人間ではない。年に一度の演劇教室くらいしか演劇に触れ合うことはない類の人間には重い気分以外の何者でもない。  (ま、授業ではないだけいいか・・・)  昨日、拓海に言ったことを自分にも諭してみる。  徐々に客席が暗くなり舞台は始まった。  そして・・・  ほどなくして王妃が出てくる。真っ黒なドレスにベールで顔を隠している。暖炉の火のことを侍女に文句を言いながらベールをあげたその顔に翔央は驚く。  彼女だった・・・。  現実に存在している林檎の樹の下の・・・彼女だった。
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