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第三章 憧憬
幕がおりて席でぼぅっとしている翔央の目の前で麻衣がひらひらと手を振る。
「翔央、どうしたの?」
はっ、と我に返って麻衣の顔を見つめ返す翔央に本気で心配そうに麻衣がおでこに手を当てた。
「具合悪いの?」
「いや・・・」
翔央の反応は歯切れが悪い。しかし、ここはなんとしてもこの幼馴染に自分の動揺を読まれるわけにはいかない。あわてて席を立つ。
「一緒に帰るか?」
「うん、いいよ」
ご近所さんの麻衣はなんのためらいもなく同意した。
「あ、いいなー!翔央ちゃん!おいらも一緒に帰りてぇ~!」
(おれとじゃなく麻衣とだろ?)
心の中でわらいながら拓海に
「お前、家逆じゃん」
と、軽口を言う。
「いいじゃん、いいじゃん。翔央ちゃん~、今日は翔央ちゃんちで遊びたい気分なんだよーぉ・・・」
(おれと、じゃなく、麻衣と、な)
「お前、きもい!」
「いやん、翔央ちゃんったら・・・ひどいわ!」
なぜかおねぇ言葉で返してくる拓海を麻衣が笑った。
「橋田クンと翔央はほんとに仲いいね」
「おぅよ!翔央とおいらは無二の親友だぜ!な?」
(いつの間にそんな話に?)
と、思いつつ翔央も同意する。
「こいつ、口は悪いしバカだけどいいやつだからな」
「ひ、ひどいわっ!そりゃ毎回学年3位から落ちたことのない翔央ちゃんに比べたらおいらなんか・・・だけどさっ!」
(マジでこいつ・・・うざい・・・)
おねぇキャラが定着しそうな勢いの拓海が怖い。そんな拓海を麻衣はきゃらきゃらとわらう。
「橋田クンっておもしろーい!」
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