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努めて冷静な口調を装いながら、霧洲さんは麻美の視線を受け止める。
「で、でも……主人がここで倒れていると聞きました。昨夜は家に帰ってこなくて、携帯にもでないから心配していたところにこんな連絡を受けて、わたし……」
突然の事態に混乱しているのか。
被害者の妻はオロオロと両手を中空に彷徨わせる。
「あの、すみません」
背後からかけられた警官の声に、わたしは振り返る。
「どうしたの?」
「遺体を運び出してもよろしいでしょうか? 一応調べられることは調べ終えましたので」
さすがに勝手な返事するわけにもいかず、霧洲さんに目を向ける。
「構わない」
「わかりました」
短く頷いた霧洲さんを見て、警官はすぐに踵を返して戻っていく。
「……久我 麻美さん、でしたか? 失礼ですが、旦那さんはいつも何時頃に帰宅をされていたのでしょうか?」
再び取り乱す女へ顔を戻して、霧洲さんは話を再開した。
「え? ……大体、深夜の零時過ぎくらいには帰ってきてますけれど、たまに十時くらいに帰るときもありますよ」
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