†プロローグ†

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      【1】 僕が僕らしく生きたいと思ったのは、いつからだっただろう。 クラスの友達や同世代の子たちと自分を比較して、はっきりと負い目を感じ始めたのが小学五年生くらいのときだったから、たぶんそれと同じくらいの時期だったかもしれない。 周囲の大多数がこうだから、自分もそうしなければいけない。 人が当たり前にしていることは、自分も当たり前にやるのが普通。 そんな世間に張り付く風潮のせいで自分を押し殺し、ただひたすら周りに合わせて生きている違和感。 集団生活の常識であり、または妥協。 ずっと、その一方的な感覚が嫌いだった。 誰にも相談もできず、もやもやした気持ちをひた隠しにする日々の苦しさ。 「……」 苦悶の吐息を漏らしながら、両手で頭を抱える。 ひんやりと冷えた自分の手が頭を刺激した。 (何とかしないと。まさか、こんな偶然があるなんて……) 奇跡、とでも呼べれば美しいのかもしれない。 “この偶然”を素直に喜べれば、きっとそれも叶った。
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