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しかし、現実は甘くなかった。
というよりも、あまりにも辛すぎる。
どうして、何も悪いことをしていない人間がここまで追い込まれなければいけないのか。
本当に、世の中は不条理なんだなと思う。
目の前に大きな壁が立ち塞がって、それを打ち破りたくてもひたすら無力で不器用な自分には到底無理で。
そんな現実に打ちのめされて、呆然となり、最後に行きついた答えが覚悟を決めることだった。
自分が望んだこと。
それを実現するために行動する覚悟を。
「僕は、絶対に――」
誰でも当たり前に手に入るような願いを叶えるために、ここから先どれほどの試練が待ち受けるのか。
想像するだけで身が竦む。
それでも逃げ出す選択肢を、諦めて背を向ける選択肢を選ばずに済むのは、僕を支えてくれたあの子がいてくれるおかげだ。
感謝しても、しきれない。
(覚悟はもう、できたかな)
自分が決めたことをやり遂げるため、僕は自問自答して鏡に映る姿を見つめる。
青ざめた自分の顔が、緊張で震えている。
「……」
これから、僕は僕の意志で罪を犯す。
このちっぽけな両手を、人を殺すために使うのだ。
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