第一章:静寂の朝より

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わたしも、同じようにして公園の入り口へ首を向ける。 「……あれは?」 公園の入り口。わたしが今入ってきたその場所に、見知らぬ女性の姿があった。 表情を歪め、制止する警官を振り切って中へ入ろうとしているその女性の行動に、つい眉根を寄せてしまう。 「……」 無言のまま歩き出す霧洲さんの背中へ続き、その女性の元へ向かう。 「どうした?」 制止する警官に声をかけながら、霧洲さんは相手の容姿を観察する。 一言で言えば、寝間着姿の中年女性。 犬を連れている第一発見者よりはまだ若いか。 「ああ、この女性は被害者の妻で、久我 麻美(くが あさみ)さんです。事件のことを説明している途中でこちらへ駈け出してしまいまして。引きとめようとは何度もしたのですが……」 「――あの、主人は? うちの主人はどうなったのですか?」 警官の台詞を遮り、被害者の妻であるという麻美は混乱の混じったような声音で霧洲さんへと詰め寄る。 「落ち着いてください。詳しい説明はこれからさせていただきます。とりあえず、まだ公園の中に入るのは控えていただけますか?」
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