第六章:悲劇のみが終わりを告げる

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「ちょっと待って下さい。海斗は何もしてません。僕が勝手に計画して、個人的に行動しただけで……。逮捕するなら、僕だけにしてください! 海斗は無実ですから!」 わたしの告げた最後の言葉に、冬美はあからさまな狼狽えを浮かべる。 そんな彼女――彼と言ってあげるべきか――を冷めた目で見つめ返しながら、わたしは小さく首を横へ振った。 二人の間でどんな打ち合わせがあったのかは知らないが、今回の殺人に久我 海斗が関わっているのは間違いのない事実だとわたしは確信している。 「ここでそんな顔して後悔するくらいなら、始めから殺人なんてしなきゃ良かったんだよ。残念だけど、もう手遅れ。きちんと二人で罪を償いな。今あなたたちにできるのは、それだけだよ」 平坦な口調でそう言うと、冬美はおもむろにわたしの方へ身体ごと向き直りガッシリと腕を掴んで頭を下げてきた。 「違うんです! 海斗は、僕のこと信じるって……言ってくれて。
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