第六章:悲劇のみが終わりを告げる

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こちらの言い分を聞いて諦めるしかないと悟ったのか、それとも己の言動の我儘さに気づいたのかはわからないが。 眼前に引き寄せた鼻水と涙で汚れた顔が、更にグニャリと歪んだ。 そして、そのまま力なく項垂れた冬美は、まるでうわ言のように 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 と謝罪の言葉だけを呻き続けた。 そんな呻き声と鼻をすする音を聞きながら、わたしは暗い空を見上げる。 (これで解決に向かうかな) 特殊な感情を心に抱えた少年少女。そんな彼らの不器用さと未熟さが引き起こした哀れな事件は、このまま終わりを迎えるだろう。 せめて、少しくらいはそっとしておいてあげようか。 嗚咽を漏らしながら謝り続ける冬美を一瞥して、わたしはスマホを取り出し霧洲さんへメールを打ち始めた。
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