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「やぁ、ちょっと遅かったね」
近づいてきた明子へそう声をかけると、
「うん、仕事が一段落するのに時間かかっちゃって」
と言いながら、わたしの正面へと腰を下ろした。
それから、また霧洲さんの方へ目を向けると改まったように会釈をする。
「あの、どうも。お久しぶりです。今日は、楓とご一緒だったんですね」
「ええ。珍しく一緒にどうかと誘われたもので。お邪魔をしてしまったならすみません」
かしこまる明子へ柔和な笑みを返し、霧洲さんが言う。
「いえいえ、そんなとんでもないです。ええ、もう、全然いてくれて構いません。楓と二人だといまいち盛り上がりに欠けると言いますか、何か物足りないといつも感じていたので」
「……どういうことそれ?」
調子の良いことを告げる明子を上目遣いに睨みつつ、わたしはメニューを取り手渡す。
明子と霧洲さんが会うのは、結構久しぶりだ。
一番最後に会ったのは、確かわたしが怪我で入院しているとき。
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